ゼネコンの設計を辞めたい人へ!意匠設計からシェアハウス運営に転身したコノハさんの体験談

残業も休日出勤も当たり前。この生活、続けられるかな?

ゼネコンの設計を辞めたいと思うことはあるけれど、辞めたあとに何をするかまでは見えていない
ゼネコンの設計職は幅広い経験ができる一方で、忙しい働き方に悩んだり、この先も同じ仕事を続けるべきか迷ったりすることもあるのではないでしょうか。
そこで今回、建築アンテナでは、意匠設計からシェアハウスの運営へと転身したコノハさんにお話を伺いました。

コノハさん プロフィール
- 2008年にゼネコンへ入社し、意匠設計部で約7年間勤務
- 退職後、約1年間の休養期間を経て、個人でシェアハウスの運営を開始
- 現在は別のシェアハウス運営を業務委託でサポートしながら、Webライティングも行う
- note:元・本でつながるシェアハウス管理人
話を聞いた人:建築アンテナ編集部(インタビュー実施時期:2026年7月)
ゼネコンの意匠設計からシェアハウス運営へ

――前職では、どのようなお仕事をされていましたか。
コノハ:意匠設計部で、マンションや食品工場、事務所ビルなど、割と幅広い建物を担当してました。
基本計画や実施設計から始まり、工事を請け負う物件では現場での設計監理も担う立場です。
設計して終わりではなく、建物が完成するところまで現場と一緒に進めていく仕事です。
――転職は、いつ頃から考えていたのですか。
コノハ:辞める2年くらい前から考えていました。
最後の1年間は「辞めよう」という気持ちは固まっていたのですが、担当していた物件があったので「この物件までは何とか頑張ろう」と思っていたんです。
次に何をするかはまだ決めていない状態でした。
ゼネコン時代は結構忙しかったので、会社を辞めたらまずはゆっくり休もうと決めていました。
実際に1年間はまったく働かず、今後どうするかをじっくり考える時間を作れたんです。
ゼネコンの設計から異業種へ移った理由3つ

コノハさんが設計職を離れた背景には、どのような理由があったのでしょうか。
1.長時間労働が続く働き方だった
――ゼネコン時代は、どのような働き方でした?
コノハ:平日は夜10時くらいまで働いて忙しい時期には土日も出勤して、残業や休日出勤は当たり前という環境でした。
今のように働き方改革が言われる前だったので、建築業界全体としてもかなり忙しい時期だったと思います。
2.建物を作ったあとの暮らしにも関わりたかった
――シェアハウス運営につながる興味は、働いているときからあったんですか?
コノハ:もともと建物の設計に興味があって建築業界に入ったんですが、建物そのものだけではなく、その中で暮らす人や空間の運営といった「ソフト」の部分にもすごく興味があったんです。
しかし、ゼネコンの設計部をはじめ、一般的な設計職では基本的に建物を作るところまでしか関われません。
完成したあとに、そこで人がどう暮らすのか、空間がどう使われていくのかにも関われる仕事はないかな、ということは以前から考えていました。
その中で、シェアハウスなら人の暮らしやその場所自体の運営にも関われそうだと思ったことがきっかけです。
3.設計職でできることは一通り経験できた
――設計職から離れるときに迷いや不安はありませんでしたか?
コノハ:ゼネコンにいた7年の間、それなりにいろいろな物件を担当してきたので、その時の自分にできることはある程度経験したという思いがあります。
設計の仕事をやりきった感覚があるので、「やっぱり建築設計を続けておけばよかった」と思ったことはないですね。
ゼネコンの設計を辞めて変わったこと3つ

約7年間続けた会社員生活を終え、個人で働くようになったコノハさん。働く時間だけでなく、仕事や以前の職場を見る視点にも変化があったといいます。
1.時間に縛られず働けるようになった
――会社員時代と比べると、働き方はどう変わりましたか。
コノハ:かなり変わりましたね。今は個人で仕事をしているので、自分のペースで働けるようになりました。
2.収入面は時間をかけて落ち着いてきた
――収入面の変化も教えていただけますか。
コノハ:個人事業主なので、会社員のように毎月決まった金額が入ってくるわけではなく、月によって収入に浮き沈みはあります。
会社を辞めてから数年間は収入も減っていましたが、何年か続けていくうちに安定してきました。
全体として見ると、今は会社員時代とそれほど大きく変わっていないと思います。
3.環境を変えたことで働き方を見直せた
――違う業界へ移ったからこそ、感じたことはありますか。
コノハ:自分のいる場所を変えると、過去の自分や働き方を冷静に見直せるというのは結構あると思います。
でも、働き方を変えた今、振り返ると「実はあんなに頑張らなくてもよかったのかな」と。
ゼネコンにいた頃は残業するのも休日出勤するのも当たり前で、その環境の中にいると、それが普通だと感じてしまうんですよね。
視点が広がるという意味でも、違う業界へ移ることにはいい面があると思います。
未経験からシェアハウス運営を始めるまでのステップ4つ

1年間休む中で、シェアハウス運営という次の道をみつけたコノハさん。開業に至るまで、どのように進めていったのかを見ていきましょう。
1.まず自分がシェアハウスに住んでみる
――シェアハウス運営を始める前に取り組んだことはありますか?
コノハ:最初はシェアハウスのことを何も知らなかったので、仕事を休んでいた1年の間に、まず住む側として入ってみたんです。
8部屋ほどある集合住宅タイプのシェアハウスです。
リビングやキッチンは共同ですが、お風呂とトイレは2つずつあり、キッチンも比較的広く、8人で暮らしていても混み合って困る感覚はありませんでした。
実際に入居して暮らしてみることで「こういう感じで運営されているんだな」と分かりました。
そこで「意外と自分でもできるかもしれない」と思い、自分でも一軒家を探してシェアハウス運営を始めてみることにしました。
2入居者募集から内見の対応まで行う
――実際にシェアハウスを始めるときは、どのような準備が必要でしたか。
コノハ:まずホームページを作って入居者さんを募集し、問い合わせがあったら内見をご案内する、という流れでした。
立ち上げの時期はいろいろやることがあって忙しかったのですが、運営が落ち着いてからはそれほどではありませんでした。
3.契約書を用意し、入居者と賃貸借契約を結ぶ
――内見を経て入居が決まったあとは、契約もご自身で進めるのでしょうか。
コノハ:入居が決まったあとは賃貸借契約を結ぶため、契約書も自分で用意する必要があります。
はじめは、自身が借主としてシェアハウスで交わした契約書も参考にしながら作りました。
――不動産の契約となると、宅地建物取引士の免許も必要なのかなと思ってしまいます。
コノハ:実はそうではないんです。
物件を仲介するのではなく、自分と入居者さんが直接賃貸借契約を結ぶ形だったので、宅建の資格を取らずに始めています。
私自身もシェアハウスについて何も知らないところからのスタートだったので、こうしたことも一つずつ調べながら進めていきました。
4.収支を考え確定申告も自分で行う
――個人でシェアハウスを運営するとなると、会計についても新しく覚える必要があったのでしょうか。
コノハ:個人事業主ですので、確定申告も自分でします。
また、家賃収入に対してどの程度の経費がかかるのかを把握し、収支を見ながら運営していく必要があります。
ただ、会計について専門的に学んだわけではありません。最初から理解していたわけではなく、分からないことが出てきたらインターネットで調べ、その都度対応しています。

コノハさんは、noteで、自身の経験をもとに、物件探しや入居者募集、契約、ハウスルール、トラブル対応など、個人でシェアハウスを運営するための情報を発信している。
コノハさんのnoteはこちらから▶︎「元・本でつながるシェアハウス管理人」
シェアハウス運営でつまずいたことと乗り越え方
運営していたシェアハウスの素敵な本棚。(提供:コノハさん)
――コノハさんは吉祥寺で「本でつながるシェアハウス」を運営していたとのことですが、このコンセプトはどのように決めたのでしょうか?
コノハ:自分自身が読書や本のある空間が好きだったので、同じ価値観をもつ人とつながりたいという気持ちから、このコンセプトに決めました。
――実際に「本」をきっかけに入居者同士が交流する場面はありましたか?
コノハ:読んだ本の話をしたり、持っている本の貸し借りをしたりするような場面はありました。読書という一人でする行為をコンセプトにしたことで、無理に一緒にいなくてもよいという気楽さも生まれたような気がします。
――運営する中で苦労されたことはありますか。
コノハ:いろいろな人が暮らすので、想定外のトラブルが起こることもあります。
例えば、「友達を招待したり泊めたりしてもよい」というルールにしていたところ、毎日のように訪れる人や、長期間泊まり続ける人が出てきました。
1部屋に1人で住む前提だったところが、実質的に2人で暮らしているような状態になってしまったんです。
そこで、友達を呼ぶ際は事前に連絡してもらうことや、連泊する場合はあらかじめ相談してもらうことなど、新たなルールを設けました。
――前職の経験が役に立ったと感じる場面はありますか。
コノハ:建築の知識が直接役立ったというより、人とのやり取りの経験ですね。
設計の仕事では、お客さんとの打ち合わせに加えて、意匠担当として構造や設備の担当者とも調整しながら進めていました。
立場や考え方の異なる人たちの間に入り、複雑な調整をする場面も多かったんです。
そうした経験を重ねたことで、人と話したり相手に応じてやり取りしたりすることには慣れていました。
シェアハウスの運営でも人との調整は欠かせないため、設計時代に培ったコミュニケーションの経験は活きていると思います。
ゼネコンの設計を辞めたい人が準備しておきたいこと
コノハさんが運営していたシェアハウスのリビングの一角にはすみっこスペースがあり、一人で本を読める場所になっていたのだそう。(提供:コノハさん)
――異業種へ移る場合、「これは事前に準備しておいたほうがいい」と感じることはありますか。
コノハ:業界が変わると、その業界ならではのルールや仕組み、関連する法律があります。
まったく違う業界だと、何が必要で何が必要ではないのかも分からないんですよね。
気になる仕事があるなら、必要な資格や手続き、業界の仕組みなどを事前に調べておくと、実際に動き始めるときもスムーズだと思います。
――今後の目標を教えてください。
コノハ:今は別のシェアハウス運営をお手伝いしていますが、また個人で、シェアハウスなり何かを運営できたらいいなと思っています。
また自分で物件を探すのもいいですし、ほかにやりたいことが見つかれば、それでもいいかなと思っています。
――最後に、ゼネコンの設計を辞めたいと悩んでいる方へアドバイスをお願いします。
コノハ:異業種であっても、転職したり新しいことに挑戦したりすることは十分できると思います。
建築の仕事って、実はかなり幅広いんです。お客さんとの打ち合わせや社内調整、お金の管理、確認申請、スケジュール管理まで、さまざまな業務を経験します。
そうして身につけた力は、建築業界を離れたからといって使えなくなるわけではありません。
これまでの経験を活かしながら、別の業界でも十分やっていけると思います。
――建築の仕事で身につけた経験は異業種でも強みになること、そして環境を変えたことで以前の働き方を冷静に振り返れたというお話が印象的でした。
コノハさん、本日は、他の業界に転職しようと考えている方の参考になるお話を聞かせていただきありがとうございました。


