インタビュー

【体験談】アトリエ系設計事務所の仕事内容とは?6年の経験を経て転職したYさんに話を聞いてみた!

kohaku
建築男子
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アトリエ系の設計事務所の働き方ってどんな感じなのかな?

建築女子
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就職や転職活動でアトリエ系設計事務所を検討しているけど、どこで探せばいいかわからない

どんなお仕事をしているかは、実際にアトリエ系設計事務所に勤務している方に聞くのが一番です!

建築CADオペ|コハク
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今回、建築アンテナではアトリエ系設計事務所で経験を積んだのち、転職に成功したYさんにお話を伺いました。


Yさん

地方大学の建築学部卒業後、小規模アトリエ系設計事務所に入社し、店舗や病院などの設計・監理を経験。
在職中に一級建築士を取得し、6年間で実践的なスキルを磨く。
現在は中規模アトリエに所属し、公共建築など大規模案件に携わっている。

アトリエ系設計事務所の業務内容や働き方が気になる方は、ぜひご覧ください。

※本記事で使用している画像はすべてイメージです。
話を聞いた人:建築アンテナ編集部(インタビュー実施時期:2025年10月)

大学卒業後インターンを経てアトリエ系設計事務所へ就職

──建築学科を出て、最初からアトリエ系を志望されたんですか?

Yさん: はい。建築学科を卒業したのち、意匠の道を志しました。

当時好きだった建築家のもとで働きたかったことと、小規模な事務所を希望していたため、候補を絞って応募しました。

大人数の会社より、裁量を持って全工程を経験できる環境を選びたかったんです。

──就職活動はどのように進めましたか?

Yさん: ポートフォリオを印刷したものを先に郵送して、選考を受けました。その後面接があり、3ヶ月程度のトライアル期間を経たのち本採用という流れでした。

アトリエ系の設計事務所では一般的な採用フローだと思います。

面接では、ポートフォリオのプレゼンをする形で進んでいきました。

──当時は地方にお住まいだったとのことですが、東京への引っ越しもこのタイミングで?

Yさん:はい。トライアルの段階でもう東京に引っ越していました。

希望の事務所に就職が決まったことと、東京で生活してみたい気持ちがあったので、とても嬉しかったです。

小規模アトリエ系設計事務所で過ごした仕事内容と6年間

──規模感や担当された仕事内容を教えてもらえますか?

Yさん: 社長と私、もう1人のスタッフという3人体制です。

仕事のクオリティを担保するために少人数体制をとっている事務所でした。

住宅・飲食店・オフィス・病院などが多く、構造は木造と鉄骨がメインです。

基本設計から実施設計、現場監理まで一貫して担当し、施主との打合せや見積もり調整なども担当していました。

実務に必要なことをすべて経験できた6年間でした。

──プロポーザルやコンペにも参加されていましたか?

Yさん: 優先順位としてはクライアントワークが一番で、仕事が一段落して手が空いた時期に、プロポーザルやコンペがあれば参加していました。

基本的にプロポーザルやコンペは1人で進める形です。

──苦労した点など印象に残っているエピソードはありますか?

Yさん:工務店や現場監督との間で伝達ミスが起きて、設計の意図と違う施工になってしまったことがありました。

現場監督に何度も電話で伝えたことが忘れられていたり、意図していたものと違うものを施工されたことがありました。

社長や先輩が毎回現場に来るわけでもなく、当初はノウハウがわからないまま手探りで現場監理を進めていた部分もあったと思います。

自分の判断が空間のクオリティに直結するため、責任の重さに押しつぶされそうになることもありました。

1つの決断が自分の給料とは比べ物にならないくらいの金額に変わることもあったので、そのギャップも苦しかったです。

──教育体制やマニュアルが整っていない環境の中で、ご自身で考えながら対応されてたんですね。待遇面についてはいかがでしたか?

Yさん: 正直待遇はあまり良いとは言えず、同じ大学を卒業してゼネコンや組織設計事務所に行った人の給料を聞くと、2〜3倍あったようです。

けれど、自分の力をつけることが最優先だったので、そこに大きな不満を感じていたわけではありません。

──6年間でご自身の成長は実感できました?

Yさん: 経験した分野については、1人で完結できるくらいにはなりました。自分が経験した建物の種類だったら大丈夫かなという感覚です。

アトリエ系設計事務所からスケールの大きな仕事を求めて転職を決意

──転職を意識したきっかけは?

Yさん: 規模の大きな建築に挑戦したいと考えたことです。

以前の事務所では、大きくても500㎡程度の建築がほとんどだったのですが、次第に1,000㎡から5,000㎡程度のひとまわりスケールアップした規模の建築に携わりたいと考えるようになりました。

──辞めることへの迷いはありましたか?

Yさん: 在籍している間に経験したいことは大体経験できたので、あまり悩みませんでした。

あとは少人数だからこそ、どのタイミングで辞めるのが一番迷惑かからないかというのは考えました。

在籍年数が長いということもあり、社長もすんなりと受け入れて送り出してくれました。

求人サイトではなく「作品」で選ぶ

──大手組織設計事務所やゼネコンという選択肢もあったと思いますが、次もアトリエ系を選んだのですね。

Yさん: いろんな人に相談するうちに、大きな組織では大規模案件にかかわる可能性が高いと感じました。

もう少し小さなスケールの建築に関わりたかったので、中規模のアトリエ系事務所を選びました。

──どうやって転職先を探しましたか?

Yさん: アーキテクチャーフォト ジョブボードというWebサイトをチェックしつつ、自分で気になる事務所のホームページを見て、過去作品の建物の平米数や仕事の種類の割合などをExcelにまとめて自分のやりたい仕事の割合が多い事務所を分析しました。

──結構、リサーチしましたね。

Yさん: 結構、頑張りました。扱っている建築のスケール感などを見比べながら候補をいくつかに絞り、その中で一番自分が好きな建築を手がけている設計事務所に応募しました。

──選考はどんな感じでしたか?

Yさん: ポートフォリオを送付したのち面接では10分間でプレゼンしてくださいという感じでした。試用期間(インターン)があって、その後本採用という流れでした。

──アトリエ系設計事務所への転職は、前職と同様にポートフォリオが履歴書代わりになるんですね。

アーキテクチャーフォト ジョブボード

URL:https://job.architecturephoto.net/

日本最大級の建築メディア「アーキテクチャーフォト」が運営する求人情報サイト。

手がけた作品の画像とともに、アトリエ系の設計事務所の求人広告が多数掲載されている。

アトリエ系設計事務所在籍中に一級建築士を取得

──一級建築士はいつ取得されたんですか?

Yさん: 小規模アトリエに在職している間に取りました。学科は独学で製図は資格学校に通ったんです。

13年分くらいの過去問を4回ほど解いて対策しました。仕事しながらだったので大変でしたが、頑張りました(笑)。

──お仕事も忙しい中での挑戦、本当に素晴らしいです。二級は取らずに、いきなり一級を?

Yさん: そうですね。周りでも、二級を取ってから一級を受ける人は少なかったです。

最終的には一級が必要になるので、最初から一級を目指す人が多い印象です。

──そうなんですね!ハウスメーカーでは、まず二級を取って一級への勉強に取り組むという流れが一般的なので驚きました。転職活動で資格を持っていることは有利に働きましたか?

Yさん:面接で「持っていますか?」と聞かれて「はい」と答えたのみでした。

特に重視されている印象はなく、持っていなければ「取ればいい」というくらいの雰囲気でした。

設計事務所によっては資格手当で月額1万円くらいプラスされるところもあるようです。

中規模アトリエで見えたチームでの設計

──今はどんなお仕事をされていますか?

Yさん: 20〜30名規模の中規模アトリエ系設計事務所で、公共建築などの大型案件を担当し、構造やスケールの違いに刺激を感じています。

構造も木造、鉄骨、RCといろいろあって、前職では少なかったRC造の案件も手がけています。

自分のやりたい規模のプロジェクトに恵まれて、充実しています。

──働き方で変わったことはありますか?

Yさん: 以前は1人で案件を担当していましたが、今の事務所では2〜3人のチームで進めるため、意見をすり合わせながら進行する工程に変わりました。

まずチームの中で合意形成を図って、その上で社長の決裁を得るという二段階になったことが大きな違いです。

──プロジェクト規模が大きくなって、関係者も増えましたか?

Yさん: プロジェクト規模が大きくなると、設備や構造だけでなく、関わる会社の数が多くなるので、まとめ方が以前とは違います。

でもコミュニケーション力を磨く良い機会にはなっていると感じています。

──待遇面や労働時間など働き方の変化はありました?

Yさん: 待遇面は思っていた以上に上がりました。中途採用なので、まずは試用期間が終わってから金額が確定したのですが、最終的には想像よりも良い条件を提示してもらえました。

働く時間自体はどちらも長く、前職とあまり大幅には変わっていません。ただ、やりたい建築に関われているという充実感があります。

アトリエ系設計事務所を選んだ自分の道を信じること

──アトリエ系設計事務所で転職を考えている方にアドバイスするなら何を伝えたいですか?

Yさん: 一度決めたら、アトリエ系の道を正解にしていくしかないので自分のことを信じて、目の前の仕事を一生懸命やっていくことが大切だと思います。

僕自身も知り合いに言われて腑に落ちた言葉です。

迷ってるのであれば、どちらを選んでも正解なので時間を無駄にしないために自分のことを信じて全力を尽くすことが一番大事だと思います。

──その言葉が転職の後押しになったんですね。自分で選んだ道を正解にしていく強さを感じます。今後の目標を教えていただけますか?

Yさん: ゆくゆくは独立を考えていますが、今の事務所でできることをやっていくことが当面の目標です。

ここで学んだことをしっかり吸収して、そのあとに独立を考えたいですね。

──同じ建築業界といえども、ハウスメーカーやゼネコンといった一般企業とは、就職活動の流れも働き方も大きく異なるアトリエ系設計事務所のお話を聞けて、とても新鮮でした。貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

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コハク
コハク
フリーランス建築CADオペ
ハウスメーカーの建築士→設備設計補助→建築CADオペレーターとして独立。 働き方を模索する中で、たくさん悩んで行動したことが今の仕事にもつながっています。後輩の転職相談に乗った経験も多数あります。
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