【体験談】住宅設計から店舗設計へ!ようやく理想の職場を見つけた転職経験者に話を聞いてみた


ハウスメーカー勤務で、ある程度決まったプランしか設計できない。もっと自由な設計がしたい……

建築学科を出たのに、なぜこんな業務もやらなくちゃいけないんだろう……
仕事をして何年か経つと、新卒で入社したときに抱いた理想と、現実との温度差に悩むことは珍しくありません。
けれど、いざ転職を考えても「何から始めればいいのかな」「理想の職場って見つかるのかな」と迷うこともあるでしょう。
そんなとき、転職に成功した人の実体験は何よりも参考になります!

そこで今回は、建築設計で転職を成功させたカニさんにお話を伺いました。

カニさん
大学の建築学科を卒業後、新卒でハウスメーカーに設計職として入社。木造住宅の基本設計・実施設計・申請業務などを経験したのち、地場工務店に転職。在来工法の戸建て住宅設計を担当し、打ち合わせやコーディネート業務も幅広く担う。2025年4月より、転居と結婚を機に設計事務所に転職し、鉄骨造の店舗設計に携わる。資格面では2級建築士を取得している。将来的には1級建築士を取得したのち管理建築士として会社に貢献することが目標。
話を聞いた人:建築CADオペ|コハク(インタビュー実施時期:2025年8月)
*本記事で使用している画像はすべてイメージです。
建築学科卒業から今の会社に転職するまでの流れ

――まず、これまでのキャリアの流れを教えてください。
カニさん:大学で建築学科を卒業して、新卒でハウスメーカーに設計職として入社しました。
最初の1年目は設計業務ではなく、飛び込み営業から始まりました。
目標件数があって、その件数分の訪問をこなすというところからスタートしたんです。
それが終わってから、ようやく設計業務に携わることができました。
先輩社員について1から10まで見て、やり方を学ぶという形で教えてもらい、1年目の終わりぐらいから自分の案件を持つようになりました。
合計2年4ヶ月ほど木造軸組工法の住宅設計に従事し、基本設計・実施設計・申請業務、お客様との打ち合わせなどがメインの業務でした。
その後転職して、地場工務店で2年4ヶ月、2年半ほど働きました。
こちらも木造在来軸組工法の戸建て住宅でしたが、ハウスメーカーとは違って自由な設計ができる職場でした。
ただ、設計職かというと契約していただいたお客様の住宅設備・内外装決めなどのいわゆるコーディネートを担当する場合がほとんどでした。
稀に担当営業として初回対応、土地探しからプランニング、ローン案内などを行うこともありました。
工務店で2年6ヶ月務めたのち、今年4月から設計事務所に入っています。
今度は住宅ではなく、店舗設計がメインの会社です。上司や先輩について設計を学んでいる状況です。
ハウスメーカーの建築設計職で感じた違和感

――1社目から2社目への転職のきっかけは何だったのでしょうか?
カニさん:いくつか要因はあったんですが、一番大きかったのは、営業と一緒にお客様の契約を取ったにも関わらず、支店長の承認が降りずに給料に反映されなかったことです。
設計社員でも契約を取るとインセンティブがプラスされるはずが、つかなかったんです。
新卒入社1、2年目の志のある状態でそういう待遇を受けて、一気にやる気がなくなりました。
――やったことが反映されていなくて、やりがいが感じられなくなったんですね。他の要因は?
カニさん:他にも、ある程度決まったプランの中からセミオーダー的に設計するのがメインで面白さを感じなくなっていました。
自由に設計するというよりは、「どのプランに当てはめるか」という、ある程度型にはまった中から考えていく感じだったんです。
ハウスメーカーでは珍しい話ではないとは思いますが、実力が伸びない気がするので、土俵を変えたいなと思ったのも一つの理由です。
また、残業の面でもハウスメーカーでは「残って仕事している方が偉い」みたいな風潮がまだ社内にあって。
男性社員がほとんどを占める中、企業体質としても古い感じが残っていました。
作業のスピードも、仕事に対する理解度もまだなかったために当たり前のように残業していて、言われることやらなければいけないことを全部こなしていこうとすると、12時を過ぎることも何回もありました。
残業が多いことへの不満もたまりにたまっていた気がします。
――その後、工務店に転職されたときには、設計の自由度や働き方の悩みは解消されましたか?
カニさん:そうですね。在来の工務店だったので、打ち合わせしながら仕様を決めていく、間取りを決めていくという形でした。
基本設計もいくつか担当して、お客様と打ち合わせして「どんな外観がいいですか」「どういう経緯で家づくりを始めたのですか」といったところを聞き出して、それを図面化していく。
そこで信頼関係を築いて契約していくというやりがいはありました。
働く時間の面でも大幅に改善されました。
住宅設計をやる中で、他の設計への興味が湧くように

――工務店から、今の店舗設計事務所へ転職した理由を聞かせてください。
カニさん:結婚を機に休日を変えたかったことと、個人住宅以外のことに興味が沸いたことです。
将来的に子どもができたときにも、家族と時間が合う平日休みから土日休みのほうがいいと漠然と思っていたんです。
――転職活動はどのように進めましたか?転職エージェントがいっぱいありますよね。
カニさん:最初は建築関係の転職エージェントや転職サイトをいくつか登録しました。
3つ4つぐらい登録してみて、いろんな情報はないかなと思ってやっていたんですが、収拾がつかなくなってしまうので、1つだけに絞ろうと思って。
最終的にたどり着いたのがビズリーチでした。
最初は転職エージェントについてもらったんですが、後々全然連絡してくれなくなってしまって。
「この会社を受けたい」と私の方から連絡していたんですが、数日間経っても連絡が来なかったりして、本当にこの人やる気があるのかなと思ったりしました。
そんな時に、気になっていた会社から直接私の方にメッセージが来たんです。
それが今、ご縁で入社させて働かせていただいている会社です。
直接オファーをいただいたので、結局はエージェントを通さずに入社しました。
――ビズリーチではプロフィールを載せておくと、向こうからスカウトが来るシステムがあるんですね。
カニさん:そうです。企業にとってもその方がいいと思いますし、レスポンスもすぐに来て「何日に会いましょうか」「面接に来てください」とスムーズに進められたので、良かったなと思います。
転職の面接は、図面のポートフォリオを準備して臨んだ

――同じ建築設計でも住宅から店舗で職種が違う転職だと思いますが、面接で意識したアピールポイントはありますか?
カニさん:転職に向けて「自分はこういうことができます」というのを、手描きのパースや図面、また過去の作成図面・竣工写真などをまとめたポートフォリオを準備しました。
これまでの仕事で手掛けた、自分で設計した住宅の図面です。
面接では、そのポートフォリオを元に話して、自分はこういう人物像だということを話す機会になったので、転職の面接で役立ったと思っています。
――面接で聞かれて困った質問はありますか?
カニさん:返答に困ったことは「今後の展望はどうですか」という質問でした。
私自身、「今後どういうものを設計したい」とか「こうなっていきたい」という明確なビジョンはなくて「建築に携わって知見を広げたい」と漠然としていたんです。
転職市場で成功するためにも、本当は何か決めて答えたほうがいいのは理解していたのですが、自分はそういう人物だと知ってもらいたくて、正直に話しました。
――反対に、うまく答えられた質問もあったのでは?
逆にうまく答えられたという質問は特になく、聞かれたことをそのまま全部話しました。
面接というより楽しく会話をしたという感覚で「こういう人だな、一緒に働けそうだな」と思ってもらえたのだと思います。
自分がどういう人物なのかを理解してもらった上で、採用していただいたという実感があります。
――決める前にもう1社受けたとお聞きしました。もう1つはどんな会社でしたか?
カニさん:集合住宅を主に手掛けている会社の建築設計職です。
その会社は、一次面接で、図面の即日課題があったんです。
「今からこの要項に沿って1時間で図面を描いてください」という課題を与えられて、描いてプレゼンするという形です。
メールとZoomでやりとりしました。
事前にメールが送られてきて、設計して、写真を撮って送り「これはこういう設計しました」と説明をするという流れでした。
――その会社はどうされましたか?
カニさん:一次面接が通ったのですが、集合住宅ではなく個人住宅のほうで雇いたいと言われたのでお断りしました。
次は個人住宅から離れたいということと、今の会社から入社OKをいただいたタイミングが重なったためです。
――なるほど。特に設計でこれがやりたいというのはないけれど、個人住宅はもう嫌だ、という気持ちははっきりしていたんですね。
カニさん:そうです。これまでの経験から、お客様との打ち合わせがメインのBtoCはやりたくないというのが1つと、個人住宅しかやってこなかった経歴から、別の設計をしたいと思っていたんです。
分業体制の今の会社で気づいた「自分のやりたかったこと」

――現在の仕事内容や働き方の変化はどうですか?
カニさん:基本土日休みで、みんなが休む日は休むという感じなので、休みの取りやすさはあると思います。
仕事内容も今の段階では満足しています。
BtoCというよりはBtoBでの打ち合わせがメインです。今は定時くらいで帰宅できていて、時間的にもゆとりができました。
――収入面での変化を聞いてもいいでしょうか?
カニさん:まだ転職して数ヶ月なので年収としてどうなっていくかわからないんですが、月収は体感で7、8万円、年収ベースで、100万円以上は上がっていると思います。
――満足のいく転職ができたんですね。企業規模が違うと、業務の面でも違いがありそうですが。
カニさん:前の職場は人数が少なかったこともあり、全ての業務を完全に分担しているわけではなく、みんなで進めているという感じでした。
1つの物件に対して全員で取り掛かるし、掃除など身の回りのことも全て自分たちでやっていたんです。
――前職では、オールマイティにいろいろ求められてたんですね。
カニさん:そうなんです。住宅ローンの説明もしていたとのことで営業的な立ち回りも多かったのですが、今の会社では、人数が多い分、事務さんは本当に事務さん、営業さんは営業さん、設計は設計という割り切りがはっきりしています。
分業が実現している今の職場では「やりたかったことはこういうことだ」と感じています。これが設計職だし、自分の仕事だと思います。
建築設計なら皆通る道!建築士の講座は会社の補助対象になっている

――2級建築士はいつ取得されましたか?
カニさん:1社目の時に取得しました。忙しかったのですが、休日を使ったりして、資格学校に通って勉強して取得しました。
実は、あまり勉強しないで取れたんです。学科も製図も、資格学校で宿題を出されるのですが、一切やらない状態でも受かりました。
2級のことなので、1級になるとまた別で難しいんだろうと思っています。
――素晴らしいですね。私は製図で筆圧が弱くて苦労しましたよ(笑)
カニさん:私は濃いシャーペンの芯や、0.9mmのシャーペンを使ったりして対応しました。
――今は1級建築士の勉強はされていますか?
カニさん:今年は結婚も引越しも転職もあったので受けなかったのですが、来年受ける予定です。
今の会社では2級の資格手当が給与についていますし、1級の資格取得のための援助があります。受験する時点で申請すれば補助が出る仕組みです。
面接の時に会社の資格支援制度の話をしてくれました。
むしろ向こうから「資格取ってくれますか」という感じだったので、「頑張らせていただきます」と。
――会社側も有資格者は多い方がメリットがありますし、カニさんにとってもキャリアアップになるのでWin-Winですよね。
転職が成功して、今の職場でやりたいことが見えてきた

――今の会社の規模感を教えてください。
カニさん:だいたい80、90人程度の会社です。主に鉄骨造がメインで、平屋や2階建ての鉄骨店舗を手掛けています。
設計と建設をやっている会社なので、いろんなノウハウが社内にあふれていて、非常に勉強になると感じています。
――職場で「こんな風になりたい」と目標になる人はいますか?
カニさん:上司にあたる人が、経験が豊富で、図面を見て「ここはこういう注意点があるから気をつけた方がいいよ」など、根拠に基づいて話をしてくれます。
経験の積み重ねで得た知見からの説明は、納得がいくんです。
まだ現場にはあまり行っていませんが、検査業務や設計監理の業務がこれから出てくると思うので、学んでいきたいです。
――今後の目標や展望をお聞かせください。
カニさん:まずは今の会社で一棟丸々やるというのがまだない状態なので、それが一つの目標です。
今まで木造しかやってこなかったので、鉄骨の図面を引いて、鉄骨の承認を得て、建て方や納まりを知る、どうやって建っていくのかを実際に目で見て、一棟丸々携わっていくのがクリアラインになると思います。
小規模店舗の設計がメインの会社なので、様々なノウハウを習得して会社に貢献していきたいです。
あとは勉強はしたけど頭に入っていない法律関係、納まり関係、構造などもそうです。
――住宅と店舗だと、規模感も違うし、法律も申請業務もすべて違いますよね。
カニさん:そうですね。経験を積み重ねていくしかないと思っているので現場の方も見れるようになっていかなければいけないと思います。
最終的には管理建築士として、責任を持った立場で設計事務所の総括を担っていきたいと考えています。
――将来的にどの分野に興味がありますか?
カニさん:分野としては構造に一番興味を持っています。ただ、実務で携わる時間がほぼなかったので、「なりたいです」というのが絵空事になっているんです。
実務で携わっていかないといけないので、何とか構造の業務に足を踏み入れるように自分で試行錯誤していかないといけないと思っています。
――転職が成功して新たな目標ができたんですね。前向きなカニさんの話を聞けてよかったです!資格取得も今の会社でのお仕事も頑張ってくださいね。